出張先、博多駅近くのビジネスホテルにチェックインした俺は、近くの居酒屋で晩飯を食おうと散策した。

結局ホテルのすぐ隣の居酒屋に落ち着くこととし、カウンターの端っこに陣取った。

ほどなくして一つ空けて隣に私服姿のおじさんが座り、焼酎を飲み始めた。

俺は最初のビールが空になり、グラスの焼酎を頼もうとして、店員に聞くと、今日はボトルが半額だという。それじゃボトルにしようかと銘柄を見ていたが、わからず、隣のおじさんにどれがうまいのか尋ねた。

そこから話が始まったのだ。

聞けばおじさんは関東から転勤するため部屋探しに来ているという。仕事は作業服卸問屋で、ワーキング業界ではそこそこ有名。ホームセンター向け事業で数億を70億越えまで成長させた自負がある。

ところが、専務取締役と若者の育成方針で対立し、期の途中で4段階降格の左遷となったという。

30歳以下の離職率が50%を超えており、自分の部下も「先が見えない」とやめてしまった。どうやらこれがきっかけで、若手のモチベーションを上げる対策を求める現場のマネジメントと、マネジメントが繋ぎ止めろ、お前が悪い、という立場の経営が対立した。女社長に直談判もしたが、専務の沽券にかかわるのか、結局左遷となった。というストーリー。

他社への転職も2社トライした。

1つは最終まで上がったが50歳という年齢のせいで却下となる。もう一社はぜひ来てくれと言われているが、自分としては今の会社でリスタートしたい。自分の選択で今ここにいるのだという。しかし今さら平社員が博多で何ができるのか、上司は元部下。未来はわからない。

未来は自分の自由な選択によって選べるし、自分の置かれた環境が世界のすべてでは全くない。何にどのくらい自分の時間を使うのかを決めればよいのだ。

俺は出張中の身なので、残ったボトルを進呈することとし、大いにエールを送ったのであった。